引箔・模様箔・柄箔について
平箔の代表的なものとして、一般的に引箔・模様箔・柄箔と称されるものがあります。金銀箔を目止めした和紙に押上げて細く裁断し、糸に撚らずに平箔のまま織物に織り込む技法は西陣古来のものです。
金銀糸を含むすべての緯糸は経糸の間を通して織り上げるのですが、平箔の場合は扁平で表裏があるため、一本ずつヘラに引っ掛け、引っぱることにより経糸の間を通します。ここから”引箔”の呼び名が生まれました。
これが明治末ごろから、切り箔や砂子箔を散らして次第にデザイン化され、大正期以後は漆やラッカーなど着色塗料を用いて、和紙に直接彩色した図柄を描くようになりました。模様箔・柄箔はここからの呼び名です。
模様箔がいつごろから始まったのか、これも不明ですが明治の後期からではないかと思われます。模様箔は、特に刺繡帯地の地模様として多く利用されました。
模様箔において、その文様は実際の図柄よりもタテ・ヨコの比率を扁平に描かなければなりません。織物に織り込まれる時には箔だけではなく地組織の緯糸も織り込まれます。その緯糸の分だけ図柄はタテ方向に延びていくからです。
また帯地一反を作るのに、おおよそ五枚の引箔を必要とします。各一枚ずつの天地の模様は、違和感のないように繋がっていなければなりません。色や模様、金銀の散らし具合など、細心の注意を払わなければなりません。
模様箔のサンプル
裁断された状態の模様箔